Hiro Miura インタビュー (1/3)

数多くのミュージシャン達が集い、凌ぎを削りあう街ロサンゼルス。彼らにとって素晴らしい楽器との出会いは“名刀”を手にすることを意味する。それだけに優秀なルシアーやビルダーにはより高度な技術や新たなアイディアが要求される。そんな環境の中で、真っ向から立ち向かう1人の男がいる。Hiro Miuraだ。彼もまた“侍”である。多弦化が進むエレクトリック・ベースの世界。彼は今何を追及しているのだろうか。その姿に迫ってみた。

「可能性を求めて」

PCI: 渡米する以前はどのような活動をなさっていたのですか?
ミウラ:19歳のとき、大学を辞め、ムーン・コーポレーションに入社しました。当時は若い人ばかりの小さな会社でしたが、シェクターのパーツなども扱い、それまでになかった“自分でパーツを選んでオーダーするコンポーネント・ギター”のハシリでしたね。ここでの経験が今の自分のルーツだと思います。その後、ラムトリック・カンパニーを立ち上げ、それから神奈川県藤沢市の楽器店で働きました。そこで、アメリカへヴィンテージ・ギターの買い付けに行くようになり、遂に1986年に移住することにしたんです。

PCI: アメリカへの移住を決心した理由は?
ミウラ:日本の楽器業界に7年ほどいて、人生の先が見えてきたんですね。いろいろなことで行き詰まりを感じていたこともあって……。それまで何度かギターの買い付けで行ったアメリカのことを考えたら、きっとまだまだ可能性があるんじゃないかと思えてきたんです。そこで気分転換にアメリカに住んでみようと思い会社を辞め、ロサンゼルスに引っ越しました。とりあえず半年も住めたら良いかなという軽い気持ちでした。それからもう22年です(笑)。

PCI: アメリカへ渡った当初はどういう活動をなさっていたのですか?
ミウラ:アメリカ人の友人が社長をしていた屋根の葺き替えや修理をする会社の事務仕事を手伝っていましたよ。でもしばらくすると、日本の知り合いの楽器屋さんから「あれを探してくれ」「これ見付けられないか」という連絡が来るようになり、半年経つ頃には、ヴィンテージ・ギターや中古の楽器を日本へ販売することが仕事になっていました。バブルの前でまだまだヴィンテージ・ギターの専門店が少なかった頃ですね。3年くらいしてStudio City(ノース・ハリウッドの地名)に“ギターギャング”というギター・ショップを開きました。それからまた3年くらいして、TakuSakashita Guitarsの坂下拓君と知り合い、別の場所に一緒に移ったんです。彼は日本のギター会社を辞めて独立した直後で、工房を探していたんですね。私はこの頃ヴィンテージ・ギターの商売の先行きに不安を感じていて、ターナー、ラリビー、コリングス、オルソン、クライン、バンザントなどのギターやピックアップを日本の問屋さんに卸したりもしていました。坂下君がギターを作るのを見ているうちに、彼の進言もあって、自分のブランド“Xotic Guitars”をスタートさせたんです。それが1996年です。

PCI: 日本とアメリカでは、ビルダーとしての意識の違いはありますか?
ミウラ:基本的には、ビルダーとしてギターを作る以上、より良い物をと思う気持ちは一緒だと思います。ただギターを作る上での違いはアメリカのビルダーは“ゼロから作り上げていく”のに対し、日本は“既にあるパーツを組み込む”ということだと思います。これはどちらが良いかということではなく、ギターを作る環境の違いでしょうね。日本にはまだまだビルダーが少ないのと、ビルダーとして独立してやっていくために必要なパーツや材料などを販売するショップが少ない。そこがアメリカとの大きな違いだと思います。そのため、日本だとボディとネックは、どこかの工場で作ってもらい、それをお客のオーダーに合わせて組み込むという所が殆どですね。アメリカのルシアーとかビルダーと呼ばれる人は1人でやっている所が圧倒的に多く、ボディやネックも自分の好みやオリジナルのデザインで材木屋から買ってきて、板から作っていくんです。ちょっとした道具も自作する人が多いです。それからアメリカのビルダーの方がわがままなんだと思います。自分の欲しいものがないのならゼロから作ろうと。ピックアップも気に入った物がないから自分で作る。アコースティック・ギターのサウンド・ホールを飾るパーフリングさえ自分で作りますからね。それと、お互いの交流や情報交換が活発なのもアメリカならではですね。

PCI: アメリカという土壌が教えてくれたものはありますか?
ミウラ:Do it yourself ! それと既成概念に囚われてはいけないということかな?自分がやらなければ何も始まらない、これは日本も同じですね。ただこちらの人は大工さんでもないのに自分で家を立ててしまったり、車を作ったり(笑)。こういう発想は日本ではなかなか出来ないですよね。それから、楽器を作る方法にしても十人十色でいろんなやり方があり、どれが正しいかは人それぞれ。だから既成概念に囚われず自由な発想が出来ます。そうなると頭の柔らかい人が有利ですね。

 

 

 

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